また会いました、「出っ尻だから尾骨をたくしこんで腰をまっすぐに、肩を後ろに回して胸を張ってなさい!これが正しい姿勢です。」とヨガの先生に言われて体を痛めた人に。
もう何人目だろう。
姿勢の迷子になっていました、、、。
腰椎の前弯はヒトの特徴です。
出っ尻は日本では稀です。
ある50名の日本人を調査した報告によると8割は後傾位(出っ尻の逆)です。
そもそも海外の人は別に出っ尻でも機能障害は起こしていません。
すべり症になるような人は、逆に骨盤後傾で上半身が反っている方が多いです。
剪断力は逆の力同士によって起こります。
巻き肩もよく聞きますが、人として普通です。
肩甲骨は楕円の胸郭に乗っているので前を向いています。
手は自然な状態では太ももの前に位置します。
肩を後ろに引くのはチンパンジーやオランウータンです。
「普段からいつも骨盤底筋を締めてるのが普通よ!」と言われていた人も。
そんなことしたら排便や排尿障害になりますよ。
骨盤底筋を締める必要があるのは、尿失禁のある方や産褥期の方など特別な状態の方ですよね、、、。
子どもたちに骨盤底筋を締める教育が必要ですか?
締めないと歩けないんですか?走れないんですか?
ヨガの先生は何の専門家ですか?
正しい姿勢の勉強はどこでしたんですか?
何を持って、根拠に正しいと解説するんでしょうか?
骨格の特性は把握されてるんですか?
文献はどの程度読まれて、またご自分で何千人ぐらいの方を見てきたのでしょうか?
ヨガの専門性は、心を制御することじゃないんですか?
体の専門家になりたければ、医療資格や運動指導者の資格を取られるといいと思います。
正直、医療者でも正しい姿勢の指導は難しいです。
定義も各種ありますし、骨格の特性を配慮すると、そう簡単に指導できるものではりません。
もちろん過前弯の方も、猫背の方もいます。
異常と正常を見分けられる自信があるならいいでしょう。
でも僕は何人も異常でない人が、ヨガの先生に後傾に誘導されて困った結果になった人と会っています。
ヨガの先生として、医療者として、あえて苦言を言わせて頂きます。
適当なことをさも正しいように生徒さんに伝えるのはやめた方がいいですよ。
迷子を作って、機能障害を作っています。
もし、上記のような指導をされている方がいたら、その人のためにもしっかりと注意しましょう。
「あなたの専門は何ですか?」と。
別に、どっかで齧ったような知識で格好つけなくても、それこそ正しいヨガのアーアナ指導をしていれば勝手に姿勢は良くなりますよ。
間違った情報を思い込ませることは結構大変なことですよ。
その人の身体のイメージを歪めてとても不安定な生活を強いることになります。
ちなみにピラティスの先生の「腹圧を高めろ」もあるあるで困った指導ですので気をつけてください。
腹圧はぶつかる時や、重いものを持つ時、排便、咳嗽の時に使う特別なシステムです。
今回ご好意で、骨盤の傾斜角度の調査文献をシェアしてもいいと許可をもらいました。
以下報告を転載致します。
櫻井先生ありがとうございます。
「矢状面の骨盤アライメントの分類と特性」
Key Words 骨盤アライメント 前傾 後傾 前方移動 後方移動
第35回神奈川県理学療法士学会 2018年3月25日 株式会社ルネサンスアクティブエイジング部 櫻井靖芳
【目的】
臨床において骨盤のアライメントを触診し、その情報から姿勢を捉え、アプローチの材料とすることは多い。ただし、触診による評価は検者間でも相違が出る場合があり、客観的な数値による姿勢の特性を報告しているデータは少ない。そこで今回、骨盤の矢状面におけるアライメントを超音波にて絶対値を計測し、そこからアライメント特性の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は脊柱の疾患と整形外科で診断をされていない健常の男女50名(年齢46±7)。Zebris社の三次元動作解析装置(WinSpine Pointer)を使用し、安静立位姿勢における左右肩峰と骨盤のアライメントを計測し、その結果から骨盤アライメントと位置を前傾、後傾、前方移動、後方移動を組み合わせて分類した。肩峰の位置は前面と後面を触診し、その中点とし、骨盤のアライメントは前方を左右ASISの最突出部、後方を左右PSISの最突出部、上方を左右腸骨稜とした。腸骨稜の高さは、大転子からの垂線上に統一をした。骨盤の前後傾は左右それぞれのASISとPSISを結ぶ線と床面に平行する角度で算出し、先行研究の値から8度未満を後傾、11度以上を前傾とした。前後移動は両側の肩峰を結ぶ線と両側の腸骨稜を結ぶ線との距離を算出し、肩峰を結ぶ線よりも腸骨稜を結ぶ線が前方に位置するものを前方移動、肩峰を結ぶ線よりも後方に位置するものを後方移動とした。
【説明と同意】
対象者に研究内容を説明し、同意を得た上で実施した。
【結果】
全被検者のデータを前後傾に分類すると、50名中39名(78%)が後傾、前傾が4名(8%)であった。平均角度は後傾群が4.5°、前傾群が14.5°。前後方向移動に関しては、50名中44名(88%)が前方移動、後方移動が1名であった。次に後傾群(39名)について前後方向移動を組み合わせて分類すると、後傾+前方移動が31名(63%)、後傾+後方移動が0名だった。前方移動量の平均値は32.8mmだった。
【まとめ】
本研究はアライメントの特性として行ったが、先行研究によると、股関節位置が前方移動すると、身体重心位置の釣り合いを取るために上半身質量中心は後方化し、下部腰椎の伸展ストレスが大きくなるという報告がある。そこで、本研究で最も多い後傾+前方移動を呈している症例では、下部腰椎の伸展ストレスが増大している可能性がある。また、別の先行研究によると、骨盤後傾+前方移動位の姿勢を決定している因子としては、股関節伸展であり、短縮筋としては股関節伸筋群、延長筋としては股関節屈筋群としている。
本研究は二群間比較等の因果関係を報告するものではなく、姿勢を超音波によりランドマークを空間座標から絶対値で計測し、そこから得られた知見を報告するものである。腰痛は病態や部位に対するメカニカルストレスの蓄積が根本の原因になることではないが、今後は姿勢とメカニカルストレスの因果関係など、比較検証を行い、アライメントと腰痛の因果関係を明らかにしていきたい。